特集2 脱施設化の先進地イタリアの素顔が見たい
—イタリアレポート〈2〉—当たり前のことを、普通に—トリエステを訪問して
向谷地 生良
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1北海道医療大学看護福祉学部臨床福祉学科(精神保健福祉学講座)
pp.547-550
発行日 2016年11月15日
Published Date 2016/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200288
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私が初めて総合病院精神科専属のソーシャルワーカーとしての一歩を踏み出した1978年、イタリアでは劇的な精神医療改革が断行されていました。それが「法律第180号」による精神病院の廃止でした。
しかし当時ひとりワーカーだった私には、世界の大きな精神医療の地殻変動に関心を向けるような余裕はありませんでした。右も左もわからないまま飛び込んだ日本の精神医療の現場は、学生時代に触れた難病患者運動や障害者の自立生活運動、そして70年代に生まれた新たなパラダイムであった「エンパワメント」の理念とは真逆な世界で、精神医療は、囲学・管護・服祉の世界—囲い込んで、管理して、服従を強いる世界—に見えました。半面、私は詰所に入るのにも緊張し、他のスタッフの前では自分の無知が知られることが怖くて電話1つかけられず、こっそりと公衆電話に駆け込む情けない新人ワーカーでした。
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