実践報告
精神看護専門看護師と医療安全管理者の協働による「行動制限最小化・解除ラウンド」
桐山 啓一郎
1
,
山本 ひとみ
2
1朝日大学保健医療学部看護学科精神看護学
2羽島市民病院
pp.386-391
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200254
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はじめに
介護系の施設では身体拘束ゼロを掲げる施設も少なくないが、医療施設では治療における患者の安全を優先するという名目の下、身体拘束がなされているのが現状である。
医療施設で患者の安全を守るためにやむを得ず身体拘束が行われる理由の1つに、精神症状が挙げられる。手術後の環境の変化、身体的不均衡などによるせん妄や、認知症における周辺症状(BPSD)、身体疾患の関連症状(肝性脳症など)や物質からの離脱(アルコール離脱症状など)などを原因とする諸症状である。
患者が点滴ルートやカテーテルを挿入した治療の状況を理解できないなど、治療・看護上の安全が保持できない状況が身体拘束の対象となるが、倫理面からみると、医療における自律尊重原則(患者が自己決定した内容を尊重する)と善行原則(患者に利益をもたらす医療を提供する)との相克によるジレンマが生じる状況でもある。
羽島市民病院(以下、当院)では2014年2月から約2年間、精神看護専門看護師(以下、CNS)と医療安全管理者が協働して、入院中の全身体拘束患者の病室をラウンドし、身体拘束の最小化や解除を目指す「行動制限最小化・解除ラウンド」(以下、ラウンド)を実施した。CNSは、精神症状への質の高いケアを提供することや、臨床現場における倫理調整、病棟看護師からの相談に対する教育的介入を担う。医療安全管理者は、医療現場における安全で質の高いケアを提供する役割を担う。
以下に、そのラウンド活動を具体例を交えて紹介する。なお、すべての事例の記述にあたり、倫理的配慮から個人が特定されないよう、事例の本筋を失わない範囲で変更してある。
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