連載 愛か不安か・3
自己救済としての家作り
春日 武彦
1
1成仁病院
pp.82-85
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200188
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家はその人の脳内である
精神を病んだ人たちの家を訪問すると、家のたたずまいや室内の様子には何か独特のものがある。ことさら異常な雰囲気というわけではないが、どこか脳内と室内とは照応しているように感じられる。心のありようと表情や顔つき程度の関連性は成立しているような気がするのである。
病んではいなくてもツキに見放されたり人生が順調に進んでいない人も、やはりそれが家屋に反映しているように思える。どんなに風通しがよく採光に恵まれていようとも、空気は鬱滞し淀んでいる。散らかり具合や汚れ具合にも、独特な投げやり感がまとわりついているように見えてしまう。廃屋や廃墟を眺めたり撮影するマニアたちも、そうした負の残響を一種の物語として堪能したいのではないだろうか。
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