研究報告
精神科病院はどのようにして時代に生き残るか?―茨城県立友部病院の質的歴史研究から
太刀川 弘和
1,2
,
井口 俊大
2
,
高木 善史
2
,
柬理 美沙
2
,
土井 永史
2
1筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻精神病態医学分野
2茨城県立友部病院プロジェクトH
pp.44-54
発行日 2011年11月15日
Published Date 2011/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100944
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研究の経緯
「祇園精舎の鐘の音……」と平家物語のフレーズを持ち出すまでもなく、人が作ったあらゆる組織は社会の変化に影響を受けて栄枯盛衰を繰り返すのが世の常です。特に精神医療は、診断や治療、患者処遇などあらゆる面で社会変化の影響を強く受けてきました。したがって精神科病院などの組織を、どのように時代に適応しつつ維持するかは、精神医療にかかわる者すべてにとって大きな課題と言えるでしょう。この課題を検討するには、現在の組織だけでなく、その組織の歴史も振り返る必要があります。
しかし、精神医療に関する歴史的検討は、従来、「我が国の精神医療は……」といったあまりにも大局的なものか、「中世ヨーロッパでは……」といったあまりにも古い時代の文献的な検討が多く*1、現行の組織の近現代史について検討されたものは少ないと思います。歴史的な問題の検証が現在の組織の宥和に影響を与えかねないためか、仮に組織の歴史がまとめられても、「○○病院○周年記念誌」といった形で、美辞麗句や年表が並んでいるモニュメント的なものが多く、組織の今後の運営に資する課題を指摘した文献資料は少ないように思います。
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