連載 ほんとうは怖いアニメーション・1【新連載】
辛抱できないアトム
横田 正夫
1
1日本大学文理学部心理学教室
pp.66-67
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100829
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「鉄腕アトム」のアトムはだれもが知っている日本の代表的キャラクターである。今でも、新聞の広告やテレビのコマーシャルに時々顔を出す。「鉄腕アトム」のテレビアニメーション(第1シリーズ)は同時代的に見てきている。懐かしく、主題歌もよく覚えている。百万馬力で、悪者を倒す正義の味方、といったイメージがあった。しかし最近、本当に久しぶりにマンガを読みなおし、テレビアニメーションのDVDを見直してみて、驚いた。アトムは「もう我慢できない」と叫び、叫んだ後に、相手がロボットであれば粉々にし、相手が人間であれば打ちのめしてしまう。「もう我慢できない」と叫ぶ姿は、考えてみると、自分自身が日常場面でのストレスに「もう我慢できない」と考えていることのモデルになっている。
ロボットのアトムは、驚くべきことに、すぐ壊れてしまう。手がちぎれ、腕がもげ、首が外れる。全身がバラバラになることもある。がむしゃらなため、自分の行動を加減できないのである。お茶の水博士は、そんな壊れたアトムを何度も修理する。その一方で、大人も子どももピストルをよく撃つ。お茶の水博士ですら、あるときには「どうしてもわがままをいうならおまえの電子頭脳をこわすぞ」とアトムに銃を向ける。登場人物は、アトムもお茶の水博士も、皆が感情のままに行動する。
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