特集2 女って大変。
仕事と家事育児―経済構造と文化規範がズレた時代を生きる私たち
澁谷 智子
1
1東京大学大学院総合文化研究科
pp.32-43
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100766
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胸がカサコソ
翌朝に実家近くでの仕事をひかえたある日、私は単身で実家に泊まった。子どもたちを夫の母に預け、母役割からも妻役割からも解放されて「娘」として母としゃべれるのが楽しみで、その日は夕食に間に合うようにいそいそと帰った。しかし、実家に着いてみると、私と一緒に食事ができるよう、後から妹も姪を連れて来てくれるという。妹の気持ちはうれしかったものの、またここで「子ども中心」モードになるのは、正直、残念な気もした。
やがてやってきた二歳一か月の姪は、まさに、かわいさ真っ盛りだった。妹が「♪バスに乗っていこうよ~♪」と歌えば、姪はすかさず「ゴーゴー!!」と合いの手を入れ、意気揚々と小っちゃな手を高く挙げる。姪の目はキラキラしていて、その表情はまぶしいほどだ。そのやりとりを間近で見ているうちに、私の胸はカサコソ音を立て始めた。日々の時間の大半を仕事に費やしている私と、子育てをしていくなかで仕事を辞め、今は育児を中心に生活している妹。お互いの生活にふれれば、どちらも何かしら感じるものがある。
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