特別記事 国立精神・神経センター・医療観察法病棟が、そのプログラムとノウハウを公開します・1
まずは治療プログラムの枠組みを紹介します
菊池 安希子
1
,
美濃 由紀子
1,2
1国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部
2東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科
pp.69-74
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100669
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ここに精神病を持つ患者が2人います。
「幻覚・妄想に苦しんでいた患者Aは、服薬中断後、しばらくして、“殺せ”という声に従って食堂で隣に座った男をナイフで刺しました」
「隣人の嫌がらせに腹をたてていたBは、再三、文句を言いに行っても相手にされなかったので、ある日、ハンマーで隣人に殴りかかりました」
責任能力鑑定の結果、2人とも心神喪失、診断は統合失調症でした。この2人があなたの勤める精神科病院に入院してきたら、どのように治療を組み立てますか。2人とも同じ治療方針でよいでしょうか。
上記A、Bのような患者は、以前は精神保健福祉法のもと、一般の精神科病院に入院していました。しかし、2005年7月15日以降は、基本的に「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療および観察等に関する法律(以下、医療観察法)」のもとで処遇されています(却下や不処遇決定もありますので、全員ではありませんが注)。ここでいう重大な他害行為とは、未遂を含む殺人、傷害、強盗、強姦、強制わいせつ、放火を指します。
医療観察法の目的は、「A.病状の改善」と「B.これに伴う同様の行為の再発の防止」をはかることによって「C.社会復帰を促進する」ことです。「A.病状の改善」と「C.社会復帰の促進」は、一般精神科の治療でも目標としているところです。違いは「B.これに伴う同様の行為の再発の防止」が目的に挙げられている点です。ではそのためにどのような介入をしたらよいのでしょうか。
本稿では、司法精神科ではどのような治療プログラムを立て、患者への介入を進めているのかについて、国立精神・神経センターを例に紹介していきたいと思います。
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