自著を語る
患者を前にして腹立たしさを覚えるということ、そして躁病のこと
春日 武彦
1
1東京未来大学
pp.84-90
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100528
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困っているのは誰?
医療者は、どんな患者に対しても立腹したり不快感を覚えてはならない―おそらく、そのような合意が世間には成立しているはずである。そうでなければ、看護師や医師の気分次第で医療の内容に差異が生じかねない。あたかも神の気まぐれのごとく、医療内容にそのつど違いが出てきてしまっては一大事である。医療者に、他人の運命をもてあそぶ権利などないのだから。
とはいうものの、怒りを覚えざるを得ない患者や、二度と顔を合わせたくない患者というものは存在する。そのような感情を機械的に否定する必要はあるまい。まっとうな人間として当然の感情を圧殺してしまっては、我々は気づかぬうちにロボットになりかねない。宗教に入信して無限の慈愛を獲得するといった方策もあるかもしれないけれど、誰もが宗教を信じたがるわけではない。余計なお世話というものであろう。
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