特別記事
薬物乱用者への精神科医療における 薬物規制法違反への対応のあり方―迷いなく精神科看護を行なうために
平井 愼二
1
1下総精神医療センター
pp.106-117
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100309
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
対象者が覚せい剤などの規制薬物を乱用した者であるとき、現場が精神科医療であるというだけで、なぜ患者として医療を提供しなければならないのだろうか、本来なら逮捕され刑務所に行くべき者なのに――と考えることが過去にはあった。しかし筆者は薬物依存に専門的に対応する部署に勤務し、検討を重ね、幸運にも解決法を見つけた。現在ではその方法を用いて、迷いなく規制薬物乱用者に精神科医療を提供している。
その方法は、「我々は医療従事者なので、対象者を“患者”として理解し対応する」というような、単純で、問題の焦点を外したものではない。社会の一端を支える医療従事者が、病態自体が犯罪の反復である薬物依存をもつ者に対応するとき、その“犯罪性”にどのように対応するかに焦点を当てた対応法である。
本稿では、覚せい剤などの規制薬物を乱用した者へ精神科医療を提供する際に医療従事者が採るべき態勢を論じる。まずは対象者の要素と対象者へのはたらきかけを確認する。そしてこれを基に社会全体での対応体系のあり方を示す。その後に、精神科医療等の援助側専門職がその体系を支えるためにどのような態勢を採るべきか、また、看護者が規制薬物乱用者にどのように対応するべきかを示す。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.