特集1 新人ナース必携お助けガイド! わからない人が多いチューブ類の操作を確認
コラム あなたが出会うであろう「治療や処置を拒否する患者さん」について
美濃 由紀子
1
1国立精神・神経センター精神保健研究所
pp.32-35
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100282
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「あきらめ」と「強制」の裏側にある
看護師の体験
身体治療や処置を行なう際に、精神科の看護師が困難に感じることのひとつに、拒否の強い患者さんのケアがあげられます。精神科の患者さんの場合、妄想や幻聴などの精神症状に影響されている場合だけに限らず、治療や処置に対して強い抵抗を示したり、説明してもなかなか理解が得られなかったり、一度承諾してもしばらく経ったら拒否する、というように、処置を行なう際に困難が伴うことがよくあります。
身体合併症をもつ患者のケアに関して、私が以前看護師や医師にインタビューを行なった際、拒否や攻撃性の強い患者に対して「いつものことだから仕方ない、どうせ言ってもわからないから……」と了承を得るための積極的関与をあきらめてしまったり、「攻撃を向けてくる患者さんに対して陰性感情を抱いてしまい、それ以上のかかわりを避けてしまった」とケアの困難さを語るスタッフが多くいました。また、患者が拒否をするなら、強制的に治療するか、一切何もしないかしか手段がないと考えているスタッフも少なくないことがわかりました。このような傾向が現場に生まれてしまうのは、過去にあった、「話したけれどわかってもらえなかった」「暴力をふるわれてかえって傷ついた」などの苦い体験から、患者へのインフォームド・コンセントに徒労感と無力感を抱き、プラスの意味を見出せなくなってしまったからのようです。また、病棟全体の風潮として旧来の精神科医療の慣習を引きずっており、自分だけが一生懸命説明するのもおかしいと感じていたり、拒否されたら強制治療が当たり前だと思い何の疑問ももたなかった、ということもあげられました。
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