研究・調査・報告
精神科急性期混合病棟入院患者におけるモデル像の獲得と入院体験の意味
松下 年子
1
,
平野 佳奈
2
,
芦野 エリ子
2
,
榊 明彦
2
1東京医科歯科大学大学院心療・緩和医療学分野
2成増厚生病院
pp.92-98
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100222
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はじめに
精神科医療においても,在院日数短縮化を目指した諸政策が推進されるなか,精神障害者にとって,急性期病棟の入院体験がどのような意味をもつのか,病棟という環境下にあって,いかなる交流を他者との間に経験しているのか,大いに関心がもたれるところである。
急性期病棟の平均3か月という短い入院期間であっても,患者は単に精神症状の改善とそれに伴う日常生活自立の回復のみならず,その患者固有の,意味のある体験を重ねていることが予想される。なかでも彼らにとって保護的,治療的な環境下で展開される人間関係,とくに病棟ナースとのかかわりは,それが支持的なものであれ,教育的なものであれ,患者のそれまでの人間関係では得られかった意義ある体験として,退院後の生活や患者の人生に影響を及ぼすものと思われる。
そこで本研究では,急性期病棟に入院した精神障害者が,入院体験中に得られた対人関係,とくに病棟ナースとの関係性から何を得ているかを明確にするために面接調査を実施した。バンデューラによる「社会的学習理論」★1のモデリング概念を導入し,かつ日常臨床から想定する限り,彼らが最も必要としていると思われる「自分自身のモデル像」および「重要他者の代理」に着眼し,看護者が患者の「自分自身のモデル像」,あるいは「重要他者の代理」としてどれだけ機能しているかを把握すること,またこれに準じて,入院患者らが入院体験を通じて自身のどのような変化を自覚し,何を学んだと捉えているかを把握することが目的である。
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