研究・調査・報告
体験者に聞く パニック障害の苦悩の日常生活と効果的なセルフケアについて
松村 三千子
1
,
泉川 孝子
2
,
杉野 文代
1
,
下村 明子
3
1神戸常盤短期大学看護学科
2大阪府立千里看護専門学校
3広島国際大学看護学部
pp.84-90
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100221
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はじめに
社会構造が複雑化するにつれ,人間関係も複雑化し,それに伴って心理的なストレスが増加し,個人の対処行動では問題解決が不可能な危機的状況に陥ることがある。今回,パニック障害の事例を紹介するが,この症例の発病当時は今日ほどパニック障害の病像が一般化していなかったため,本人自身が病気を把握するまでに時間を要し,経過が長期化した事例である。
パニック障害は多彩な症状を呈する。一般に,パニック障害は身体症状に対する比重が大きく,しかもその症状は特定の臓器に集中する傾向にあるが,器質的には異常を認めない。
また,パニック障害患者は自己の内的感情に対する気づきや言語的表現は豊かであり,病状に対する訴えは非常に多いといった特徴を呈する。しかしながら,訴えが十分に聞きいれられない場合,またはその訴えを軽視されたと自覚した場合,患者はその症状に対して人知れず悩み,自殺を考えるほどの絶望感に苛まれる。また,パニック障害は劇的に回復する疾患でもないため,社会生活や集団生活からのリタイアを余儀なくされるなど,生活の質さえも低下する。
今回,そういった経過を抱えながら12年間苦闘しているTさんを日常的にサポートし,効果的なセルフケアについて一応の結論を得たので,ここに報告したい。
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