海外だより ボストン留学記・2
アメリカ留学者の苦悩
小西 敏郎
1
Toshiro KONISHI
1
1東京大学医学部第2外科
pp.1249-1251
発行日 1991年10月20日
Published Date 1991/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900529
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研究室での実験
留学中の8ヵ月間の短い期間ではあるが,ニューイングランド・ディコネス病院の外科および放射線科の研究室でbiochemical modulationの基礎実験を行うことができた.ヒト大腸癌培養細胞を用いてメソトレキセートによる5フルオロウラシルの効果増強について,最新のサルフォローダミンB法を用いて基礎検討を行った.これまでのわれわれの臨床研究では,胃癌ではメソトレキセート/5-FU時間差療法は未分化型の組織型を有する胃癌に有効であるとの結果を得ているが,大腸癌培養細胞でも未分化型癌に対してメソトレキセート先行投与が5-FUの効果を増強する実験結果が得られた.
新しい手法を学びながら,幸い今回の留学期間中にまとまった実験結果が得られたのであるが,しかし,最初に実験を始めるまでが紆余曲折の連続であった.私の留学期間は8ヵ月と,研究室で新しいテーマで実験を始めるにはやや短く,また私の留学したSteele教授の外科の研究室は診断や転移のメカニズムに関する基礎研究を中心に取り組んでおり,化学療法の基礎研究はまったく行われていなかった.それでニューイングランド・ディコネス病院の外科研究室の実務責任者であるJessup助教授に,私がSteele教授の研究室で実験することを承諾してもらえなかった.
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