特集 見て,聞いて,触って,身体所見から考える妊産褥婦の異常とその対応
息苦しい
杉浦 多佳子
1
,
藤田 恭之
1
SUGIURA Takako
1
,
FUJITA Yasuyuki
1
1九州大学病院総合周産期母子医療センター母性胎児部門
pp.1077-1080
発行日 2022年8月10日
Published Date 2022/8/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000267
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
妊婦が,妊娠産褥期に「息苦しさ」を訴える原因は多岐にわたる。「息苦しさ」=「呼吸困難」をきたす原因を考える際に,妊娠での呼吸・循環機能の変化を知るとより理解が深まる。妊娠中の呼吸機能は,妊娠中期以降の子宮増大に伴い横隔膜は4cm挙上し運動が制限される一方で,胸郭の拡大により胸囲は5~7cm拡大し胸部の容積は保持される。妊娠中に酸素消費量は約20%増加し,分娩時には40~60%増加するとされるが,1回換気量の増加,酸素運搬能の増加,心拍出量の増加により酸素摂取量も増加する。循環血液量は妊娠32~36週をピークに非妊娠時の150%前後まで増加する1)。健常妊婦でも体重増加や腹部膨満により呼吸困難,動悸,頻脈,浮腫などは認められ,それらの症状や所見が正常なのか異常なのかの判断をしなければならない。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.