発行日 1951年2月15日
Published Date 1951/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906801
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神經衰弱やヒステリーという言葉は昔から我々に親しいもので,醫者仲間ばかりでなく一般世間の人達も隨分きまゝに使用しているけれども精神醫學の立場から眺めてみるとこの言葉ほど實用の上で誤つた意味に使われているものはないし,又專門的に考えてもあいまいなものはない。
もともと神經衰弱とは精神系統の活動があまり要求された結果疲れてしまつた状態という意味に考えられた。しかし外來などで神經衰弱の病名で送られてくる患者の多くをみていると,それは欝病であつたり,分裂病や進行麻痺のような器質性の腦病の初期のものであつたりする場合が再々である。こうした病氣は本來苦惱,性怖,その他の精神的原因,心の惱みに基くものではなくそれとは無關係な内因性或は外因性の生物學的な原因によつて發病してくると考えられる。患者の近親者はよく失戀,破産,重税,過度の勉強等を發病の原因としてあげるものだが,そうした訴えに餘り捉われていて病氣の本質を見逃すようなことがあつてはならない。
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