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ある看護師のため息
「看護研究が好きになれない。やたてみても、どこか嘘っぽくて……患者さんが知らないところで自己満足している気がする。でもこんなこと仲間に言っても嫌われるだけ。ああ、また院内発表の季節だ。すっきりした気持ちでがんばれないなぁ……」
たしかに、それを言ったら嫌われるよ。軽蔑されるかも。下手をするとお説教を喰らうだろうな。「看護研究なんか、大嫌い」と自信と誇りをもって言える人はめったにいない。看護研究を苦手だと思っている人も、自分に研究能力がないのが問題であって、看護研究そのものを馬鹿らしいとは思っていない。実際の看護が上手にできて、看護研究も立派にこなすというのが「超できるナース」のイメージだ。看護研究を勧められて、断るときに「家が忙しくて……」と言い訳するときの、ちょっとみじめな気持ち。あれって、自分の不甲斐なさの自覚にも関係してるんだろうな。看護学校の卒業前、学生は必死になって臨地実習を看護研究にまとめる。看護教育の最終課題は看護研究だ。学校での看護研究の位置が、そのまま臨床現場にも影響を及ぼしているのだろう。仕事だけで精一杯、研究活動をしないナースは未熟だと評価されることも多い。
自分の経験した看護実践を、目的・対象・方法・結果・考察・結論と構造化し、論理的に表現する。こうして見えにくい看護の姿が浮き彫りにされ、人に伝えることができる。看護研究は探求だけでは終わらず、必ず発表されるものだから、「伝える」ということがとても大切なポイントになる。伝えるべき内容は、成功もしくは将来の成功に結びつく反省だ。看護の質的向上に寄与する看護研究の積み重ねが、患者の利益と看護の社会的評価につながる――広く唱えられている看護研究の意義には、反論を許さない強さがある。
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