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救急搬送が途切れ、珍しく救急外来に静けさが訪れた。天井のスピーカーからは、普段は流れていることすら気づかれない優雅なBGMが聞こえてくる。研修医は関根に話しかけた。「ChatGPTって知っていますか? ChatGPTに医師国家試験を解かせてみたら合格基準を超えていたらしいですよ!」関根は診察室の無影灯を拭き掃除しながら研修医に応える。「もはや知識ではAIに勝てないだろうね。医者は淘汰されずに生き残れるかな?」研修医は電子カルテの一覧に新たな患者が受付されたのを確認しながら「人間らしく、優しさで勝負します!」と鼻息を荒くする。関根はにやりとしながら続ける。「でも、ChatGPTと医師を比べて、質問への回答の質はもちろん、共感力すらChatGPTが医師よりも高評価だったなんて報告もあるよね。そもそも医師のコミュニケーション能力ってのは、みんなが期待してるほど高くないのかもね。」研修は聴診器を握りしめて立ち上がる。「そうなんですか?! いつかAIに職を奪われるかもです…。とりあえず、いま来た患者さんを診てきます!」
病歴聴取を終えた研修医が関根のところに駆けてくる。「56歳女性、主訴は腹痛です。検査の方針の相談です。昨日から右下腹部痛が持続しています。昨日近医受診し、胃腸炎の疑いとして内服処方されています。今朝、他のクリニックを受診し、血液検査を受けて異常ありませんでした。症状改善なく、今日の午後、さらに他のクリニックを受診し超音波検査を受けて、やはり異常なかったようです。あとは造影CTで精査するしかないと思うのですが、それでいいでしょうか?」関根は診察室に向かって歩き始め、「次の検査を考える前に、一緒に診察をしてみよう。」と応える。
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