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はじめに
医療現場ではさまざまな事故が起こるが、正常な判断を下せない精神状態により、患者が物品を不適切に使用し、自分の体を傷つけたり、他人に害を加えたりするといった事故は精神科領域における特徴的な事故である。そのため、不適切に使用すれば危険が生じると予測される物品については、「病棟における危険物、薬品の適正な管理によって患者の安全を確保する必要がある」*1とされている。
しかし、取り扱う人や場所、時間帯、周囲の環境によってリスクは変化し、何が危険物であるかについては明らかな特定ができないため、職能団体の発行するマニュアルによれば、「何が危険物であるかについては、各病院、各病棟単位で協議し、取り決めておくこと」*2とされている。そのため、各病院、病棟ごとにその受け入れ患者特性やスタッフ配置などの要因により、管理実態が異なっているのが現状であると予測される。しかし、リスクマネジメントの視点から考えると、「危険物」の指定範囲の適切なあり方について検討を加えることは有益であると考えられた。
そこで筆者らは検討をはじめる前に、他院における実態を調べるために二段階の調査を行なった。第一段階として、精神科急性期病棟の病棟看護管理者を対象とし、質問紙によって危険物管理の実態について調査し、第二段階として、面接調査によって危険物管理に必要な視点ついての考えを聞いた。そして上記の調査で得られた結果を参考にしながら、最終的に、ある精神科病院の急性期治療病棟(保護室を除く一般病室)において、危険物の適正範囲について実際的な検討を行ない、危険物指定品の見直しを行なった。
本論ではこれらの調査、検討過程について報告し、精神科における危険物についての一考を述べる。
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