特集1 新人ナース必携お助けガイド!精神科でよく起きる自傷・事故の処置法
②「自傷」編―身体と心、両方への対応が必要
松岡 裕美
1
1東京医科歯科大学医学部附属病院
pp.23-32
発行日 2006年5月1日
Published Date 2006/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100044
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自傷とは、何らかの形で自分自身に危害を加える行為のことをいいます。自傷行為には、リストカット(手首を切ること)、過量服薬、シャンプーや殺虫剤の摂取、飛び降り、縊首など、重篤な状態に陥ってしまう可能性の高いものから、身体を叩く、髪を抜く、食事を摂らない、出血するまで爪をかむ、排泄を我慢するなどのようにジワジワと自らを傷つけるものまであります。自己の感情(不安、葛藤、自責、空虚など)を言葉ではなく行動で表すことを“行動化”といい、それが自己に向うことで自傷行為に至ります。また、幻聴や妄想に追い込まれて自傷行為に及ぶ場合もあれば、死への願望、生きることへの絶望のために「死」を目的として自傷行為に及ぶ場合もあります。
その自傷行為が自殺企図なのか、あるいは死ぬことを目的としない行為なのかは考慮しなければなりませんが、どちらの場合も、患者が自らを傷つけざるを得ない状況に追い込まれているということに違いはありません。そして、たとえ「死」を目的としていなくても、生と死の境界が非常に曖昧になっていたり、「生」に執着していなかったりします。
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