特集 「身体合併症」の極みとしての「がん」看護
[2]【研究論文】
がんを併発した精神疾患患者の治療・看護の現状と課題
美濃 由紀子
1
Yukiko Mino
1
1東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科精神保健看護学分野
pp.18-37
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100002
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I.はじめに
精神疾患患者が身体疾患を併発した場合、その早期発見や適切な治療は非常に困難である*1・2といわれている。とくに、日本における主要な精神疾患患者入院施設である単科精神科病院では、諸外国に比べ在院日数の長期化が極めて深刻な問題*3となっており、身体合併症のケアは今後ますます重要となってくる課題である。なかでも、死に至る可能性の高いがんを併発した精神疾患患者の治療・看護においては、実践的な取り組みの遅れによる悲惨な実態が憂慮されてきた。近年、がんの治療・診断技術は進歩し、看護研究にも力が注がれつつあるが、それをそのまま精神疾患患者に適用することは難しい。そのため、がんを併発した精神疾患患者の看護に携わる看護師が不全感や無力感を抱くことも少なくない*4・5。
この問題に関する先行研究の内容は、合併症治療の全般に関連する包括的な問題点の指摘*6~8、合併症ケアマニュアルの提案*9・10、合併症事例の報告*11~14などに限られ、綿密な現状分析に基づいて望ましいシステムや適切な方法を提示するものとはなっていない。また、がんを併発した精神疾患患者の治療と看護に焦点をあてて、考察を加えた文献は見当たらなかった。
そこで本研究は、がんを併発した精神疾患患者の治療過程の実態に分析を加えて、治療と看護を阻害している要因を抽出し、適切な治療と看護を実現するためには何が必要かを明らかにすることを目的とした。
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