特集 「身体合併症」の極みとしての「がん」看護
[1]特集にあたって
「精神疾患を併発」していると、なぜこんなに事態は難しくなるのか―私をこの研究に駆り立てる苦い体験
美濃 由紀子
1
Yukiko Mino
1
1東京医科歯科大学大学院・保健衛生学研究科精神保健看護学分野
pp.14-17
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100001
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きっかけは、ある単科の精神病院で出会った、1人の患者さんでした。
彼女は、色白で品のよい60歳代の女性で、統合失調症でもう何年も閉鎖病棟に入院している患者さんでした。歴史が好きで、ベッドサイドには本がたくさん置いてありました。普段の彼女は自室にこもり、静かに腰をおろしているか横になっているかの生活で、他の患者たちとの交流は一切ありませんでした。私はいつも1人で座っている彼女がとても気になっていたのです。
その頃、私は看護教員として病棟に入っていたので、忙しい病棟のスタッフよりも比較的時間がありました。また、学生が受け持った患者さんだということもあり、私は折に触れて彼女の病室を訪問しては、声をかけていました。そのうち彼女は、私や学生が訪れると静かにベッドの横を空けてくれ、ゆっくりと話し始めるようになりました。本が好きということもあり、彼女は豊富な知識から多くのことを私たちに教えてくれたのでした。
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