―カゾクヲコエテ―超・家族・8
死は家族のものか?
上野 千鶴子
1
1東京大学大学院
pp.678-679
発行日 2000年8月15日
Published Date 2000/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902394
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シングルのままガンで死んだ親しい友人の末期を見舞った人が,怒りを抑えきれないようすで語っていた.いざ臨終というと,それまであまり彼女と行き来もなかった家族がのりだして,「これから先は家族だけにしてほしいから,遠慮してください」と,病室から追われたのだそうだ.それも,彼女の妹の夫,という疎遠な人から.
彼女が晩年にもっとも親しくし,彼女の生き方や感じ方に共感し,たくさんの感情や経験を共有した友人が排除され,かわって「親族」と称する人々が,死者に対して権利を行使する….「親族」にとりかこまれているより,わたしがいっしょにいてあげたほうが彼女にとってはよかったかもしれないのに…と,言葉にならない思いが,そのひとの口の端からこぼれていた.
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