―カゾクヲコエテ―超・家族・7
家族介護はほんとによいか?
上野 千鶴子
1
1東京大学大学院
pp.590-591
発行日 2000年7月15日
Published Date 2000/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902196
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介護保険が始まっても,いちばんよいのは家族介護で,家族の手が及ばないところを他人の手で補っている,という気分の抜けない人は多いだろう.それにしても,その「家族」と称するひとたちの大部分は「息子の嫁」で,もとはと言えば「あかの他人」ということはすっかり忘れ去られている.夫婦は一生他人,他人の親はもっと他人.他人を「わが子」のように迎え入れるということの不自然をおおいかくすのが,昔の三三九度だった.そこでは夫婦の固めの杯を交わす前に,夫の両親と嫁に入る女とが,まず親子の固めの杯を交わしたのである.事実婚をしているわたしの友人は,相手の親に初対面のときにおもわず「おとうさん,おかあさん」と呼びかけてしまって,あとで後悔した.「親子じゃないんだから,親子のふりなんかしないで,ずっと『おじさん,おばさん』って呼んでおけばよかったわ.その方が適度な距離を保てたのに,いまさら呼び名を変えるわけにもいかないしね……」と.
さて,家族介護の話だった.育ててもらった恩とか,親子の自然の愛情とか言うのだったら,他人の嫁より血のつながった息子が看るほうがよい.亀井静香さんは自分の親を介護するために国会を介護休業しよう,なんていうのかな.そうなれば「息子の鑑(かがみ)」である.
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