―カゾクヲコエテ―超・家族・10
家族介護者とはだれか?
上野 千鶴子
1
1東京大学大学院
pp.838-839
発行日 2000年10月15日
Published Date 2000/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902084
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この夏,介護保険の利用者調査のために,東京大学の学生,総勢43名を引き連れて九州へ現地調査に赴いた.それというのも現地に入ってみなければわからない利用者の現実を知るための面接調査が目的である.介護保険の利用者調査,と言ったときに,ただちに浮かぶのは,いったい誰が利用者なのだろうか,という問いである.要介護者本人か,それとも家族か?
痴呆のある要介護者の場合,問題は複雑である.本人に意思決定能力が少ない場合,ケアマネジャーが相談したり同意を求めるのは家族であって本人ではない.そのうえ,負担の問題がある.65歳以上の1号被保険者は10月まで保険料凍結とはいえ,利用料の1割負担はのしかかってくる.月額1万円を超せば,年金生活者の家計にとってはばかにならない.金は誰が払うか.金の出所はどこか.たとえ要介護者自身の年金であっても,それを管理しているのは誰か.他人の金でも自分の手元で管理していれば自分の金のような気分になるもの.親の年金からだって支出を惜しむような家族もいるだろう.
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