―カゾクヲコエテ―超・家族・4
他人の目が入らない家族の闇
上野 千鶴子
1
1東京大学大学院
pp.306-307
発行日 2000年4月15日
Published Date 2000/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902148
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家族に他人の目が入らないことってこんなにもおそろしいのだ…と震撼したのは,例の柏崎の事件であった.小学生の女児を誘拐,9年2か月にわたって監禁した37歳の青年(といってよいだろうか?)の事件である.高卒後無職で20年間,母親と2人暮らし.いったいどうやって食べていたのだろうと思うが,母親は高価なクルマを息子に買い与えて3度のメシもつくってやっていた.裕福な家庭だったという.
20代後半から30代半ばまで,長引かされた青年期をゆとりのある親のもとでスネをかじりながら過ごす未婚の男女を,「パラサイト(寄生)・シングル」と名づけたのは家族社会学者の山田昌弘さんだが,そのなかには病理的なケースもある.10代の半ばから子ども部屋にひきこもりを始めて,10年20年になるという青年たちだ.ひきこもりはしばしば家庭内暴力とも結びつく.
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