特別寄稿
近年の訪問看護の歴史―制度化の経緯を中心に
野村 陽子
1
1厚生省保険局医療課
pp.344-350
発行日 1996年9月15日
Published Date 1996/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902233
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はじめに
日本の訪問看護は,約100年以上前から行なわれていた派出看護をルーツとしていると考えられる.その後この派出看護と並行して困窮した家庭の患者や母子を対象とした巡回看護が行なわれ,戦後は公衆衛生看護活動を中心にその展開がなされてきた,しかし,欧米諸国で行なわれているような“看護業務の実施”を主体とした訪問看護は,約20数年前から始動し出し.また訪問看護が制度化されたのは14年前の1982年で,近年になってようやく本格的に訪問看護が広がり始めている.
医療制度の中で実施される訪問看護が近年まで普及しなかった背景には,家族構成が現在でも3世代世帯が13.1%(65歳以上の者のいる世帯は36.6%)を占めており,家族が老人や病人の世話をすることが当然とする社会風潮があり,その上他人を家庭へ入れたがらない文化的背景があったこと,またそれに加え医療機関に介護が必要な老人が長期間人院しているため訪問看護が必要な療養者が地域に少なかったこと等の影響が考えられる.他方,日本の医療体制は医師の力が絶大で,看護婦は医師の補助者という位置に置かれているため,訪問看護という看護職独自の活動分野の発達が遅れたことも考えられる.
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