特集 痴呆ケアについて知っておきたいこと
痴呆と他疾患との鑑別について
西村 徹
1,2
1前:東京都立中部総合精神保健福祉センター高齢者精神医療相談班
2現:東京都立松沢病院精神科
pp.352-357
発行日 2002年5月15日
Published Date 2002/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901485
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はじめに
東京都の3か所の精神保健福祉センターには高齢者精神医療相談班(以下,高齢者班と略す)という訪問相談班があり,専門の精神科医と看護師が地域の保健所や福祉事務所の保健師に同行して,高齢者の家庭訪問をしている。訪問の対象者は精神症状や行動異常(問題行動)があり痴呆が疑われる高齢者であるが,老年期に限らず初老期痴呆のケースも訪問している。
中部総合精神保健福祉センターは東京23区の南西部10区(大田区から練馬区まで)を管轄しており,管轄エリアの人口は約400万人である。高齢者班は毎年100件以上の家庭訪問を行なっている。実際に訪問してみると,痴呆ではなく精神障害と判明するケースも少なくない。そのような精神障害のケースは全体の約20%を占める。痴呆ではあるが痴呆の病名の他に精神科疾患の病名を併記せざるを得ないケースも約10%を占める。純粋な痴呆症のケースは約70%である。要するに,全体の約30%は,ホームヘルパーなどの介護者や訪問看護婦が普通に痴呆症として対応すると,おかしなことになりかねない。
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