連載 くせものキーワード 第8回
在宅ケア
朝日 雅也
1,2
1「保健・医療・福祉のキーワード」研究会
2埼玉県立大学
pp.65-69
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901391
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「在宅ケア」とは,疾病や障害など生活上のさまざまな困難を抱えていても,可能な限り住み慣れた自宅や地域で暮らしたい,暮らさせたい,そんな思いを実現する一連の援助といえます。ケアを展開させる場が,病院や施設ではなく「自宅」であることに特別な思いを寄せる方もいることでしょう。病院や施設でのケアに対置する形で発展してきたことに重きを置く見方もあります。その意味では,何と響きがよく耳に心地よいことばでしょうか。
しかし,改めて考えてみると「在宅ケア」の持つ意味は曖昧です。例えば,自宅でどこまでの「ケア」を求めるのか,難しい面があります。いくら住み慣れた環境がいいからといって,高度な手術後のケアをただちに自宅で受けることを望む人は少ないでしょう。そこまでの高度さは要求しないまでも,病院や施設で行なわれるケアと比べて自宅ではその「質」が確保されるかどうかも気になります。また「在宅」というと病院や施設に比べてそれだけで肯定的な印象を与えられがちですが,養護学校を卒業した後,障害が重いために日中の行き場のない若い障害者を支援する分野では,「在宅」は,閉じこもりを思わせる,否定的な意味で用いられることがあります。
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