連載 暮らしの手触り・第9回
これからの医療者の休み方
坂井 雄貴
1,2
1にじいろドクターズ
2ほっちのロッヂの診療所
pp.322-323
発行日 2024年7月15日
Published Date 2024/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688202128
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一か月くらいの間、医者を休んでいた。頭の中がいろんな考えでいっぱいになり、絡まった糸のようにごちゃごちゃとしてしまったので、一度仕事から離れることにしたのだった。そんな休みの間に何をしていたかといえば、普段よりも長く寝たり、ちょっと凝った料理をしてみたり、山奥に二泊三日でリトリートに行ってみたり、整体に行ってみたりと、さまざまな休み方を試行錯誤した。そして、いざ仕事から頭を離そうとすると、これがなかなか難しいものだと気づいた。
三年前に院長という職に就いてから(いわゆる「雇われ院長」というやつなので、経営や人事の全責任を負っているわけではないのだけれど)それでもある程度は自覚と責任を持って仕事をしていた。それは管理者として、24時間365日、有事には対応しなければいけないというプレッシャーとも隣り合わせだった。振り返れば、日常的に休むことがうまくできていなかったと思う。例えば医師として、月に数回ある夜間休日の訪問診療のオンコール当番をしている時。ほとんどが電話対応で、実際の出動は多くないにしても、いつ来るかも知れない相談に備えて常に気を張っていたら身が持たない。私の場合、結果として緊張の中に意識的に日常を混ぜたような、少し夢心地な時間を過ごすことになる。また、在宅医療は暮らしに関わる医療であり、病気や薬といった医療そのものではない日常に関わることが仕事とつながることもある。町に出れば、患者さんやそのご家族に出会い、「お元気ですか?」などと声をかけられることもしばしばだ。地域で医療をする以上、完全に仕事から離れることはとても難しい。
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