特集 訪問看護の胃ろうケア―迷いながらも寄り添って
「平穏死」を言う前に
千葉 信子
1
1多摩たんぽぽ
pp.862-866
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102622
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近年、にわかに「胃ろう」がクローズアップされている。話題の中心は、胃ろうの功罪だ。一方で、「尊厳死」の法制化が議論され、「平穏死」という言葉が1人歩きし始めた。今なぜ、「尊厳」を守るという名目のもと、急に胃ろうの功罪が取り沙汰されるのか。つい最近まで、胃ろうの造設とケアに関する研修が数多く開かれてはいても、その功罪が問われることはほとんどなかったというのに。
たしかに、胃ろうからの栄養で延命し、うつろな表情で管につながれ寝たきりになっている患者さんたちがいるのも現実である。それは、誤嚥性肺炎や体力低下を防止するためと、多くの病院で当たり前のように造られてきたが、その後のリハビリは進まず、経口摂取に移行できないなどの結果になったと思われる。筆者自身、長らく病院に勤務してきて、このような風景を目の当たりにしてきた。医師の指示に疑問をもたずに管から食事を流すという仕事を見聞きし、少なからず関わってもきた。インターネットを見れば、胃ろうによって命を長らえることになった脳梗塞や認知症などの患者家族が、経済的負担などに苦悩する経験が縷々(るる)と連ねられている。
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