特集 「帰って来られる地域」をつくろう がん患者さんの退院支援・外来治療支援
―【実践講座❹】―安心して退院できる「地域づくり」は“関係づくり”―浅草での「緩和ケア」をめぐる取り組みから
倉持 雅代
1
1浅草医師会立訪問看護ステーション
pp.308-313
発行日 2012年4月15日
Published Date 2012/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102165
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1人暮らしの頑固なおばあさん。大腸がんが見つかって開腹手術に踏み切ったが、切除困難で閉腹。退院後、訪問看護が開始となった。子どもたちは同居を勧めたが、退院時にはADLも保てていて、本人の希望で1人暮らしを続けた。「訪問看護なんて要らない」と言う本人。家族が説得してしぶしぶ受け入れたが、当初は当然ながら必要と思われず、ただ顔を見てくるだけだった。
しかし、何度か訪問するうちに、少しずつ関係ができ、ある日、テレビから看取りの話題が聞こえると、夫が挿管されたまま亡くなったことを自ら語り出し、「わたしゃ嫌だよ。何もしなくていいよ。家がいいね」と言っていた。家族から、がんの末期であることを本人には伝えないでほしい、と言われていたが、自分の状況をある程度は把握している様子がうかがえた。
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