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ラップ療法*1は、食品用ラップや穴あきポリエチレン袋などの医療機器ではないものを創傷被覆材として用いる褥瘡ケア法*2であり、その簡便性と経済性、そして有効性から、広く草の根的に広まってきた。しかし、ラップを貼りさえすればどんな褥瘡も簡単に治せるといった誤解がインターネットなどを通じて広まり、適応しない症例に安易に使用されたり、ケア方法を誤った結果、逆に創が悪化したという報告も少なからず出されてきた。このことは、ラップ療法を行なう医療者にとって、きわめて不本意なことだ。「創の状況に応じて、適切にラップ療法を行なう」という当たり前のことを改めて強調する必要を感じている。
そこで本稿では、まずラップ療法の基本と合併症対策を図説する。そのうえで、“ラップ療法を選択肢の1つに加えた総合的な褥瘡ケア法”における被覆材の選び方をフローチャートを交えて解説した。なぜなら、ラップ療法が老健施設や療養病床で現実的な治療法として普及する一方で、急性期病院では褥瘡局所療法ガイドラインに則った医療用創傷被覆材による治療法が行なわれており、すなわち、急性期病院と後方病院の褥瘡治療法の間に乖離が生じているからである。在宅現場においても、訪問看護師や在宅医のラップ療法への関心度の違いなどから、結果的に混乱が生じていた。このような点も鑑みて、2010年3月、日本褥瘡学会理事会が「施設や在宅などの療養環境におけるラップ療法を条件つきで認める」見解を出し、ラップ療法が褥瘡治療体系の選択肢の1つになった今、急性期病院、後方病院、そして、施設、在宅の区別なく、シームレスな褥瘡ケアを提供するために、ラップ療法の正しい適応と安全な施行に関する知識を共有したいものである。
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