連載 ほんとの出会い・17
プリマドンナと詩人の魂
岡田 真紀
pp.681
発行日 2007年8月15日
Published Date 2007/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100893
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キラキラと輝く小ぶりのティアラをウェーブのかかった白髪に載せて,肘までの真っ白な長手袋をはめた手を祈るように胸の前に合わせ,ステージで歌うソプラノ歌手の加古三枝子さん。もう20年近く前のコンサートでの姿だが,その軽やかなコロラトゥーラの声の響きが今も耳に残る。加古さんは大正5年生まれ。東京音楽学校で声楽を学び,戦後初めてベートーヴェンの第9交響曲のソロを日比谷音楽堂で歌った。その加古さんが86歳で亡くなって5年たつ。
加古さんと親しくなったのは,ご主人の民族音楽学者,小泉文夫先生が亡くなった後のこと。先生の伝記を書くためにお宅に通ううち,その明るくお茶目な人柄に惹かれて,仕事が終ってからもしょっちゅうお邪魔していた。
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