特別記事
「生涯人間発達論」の新しい課題―21世紀初頭10年目の節目に
服部 祥子
pp.357-361
発行日 2010年5月15日
Published Date 2010/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101601
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10年間の総括的考察
21世紀初頭の10年,この間に日本や世界が遭遇したさまざまな出来事や社会的状況―成功や達成もあれば打撃や危機もある―は,人間の生命や生活のありように大きな変化をもたらした。10年前の2000年3月,私は対人援助を専門とする職にある人たち,看護者,介護者,医師,教師,およそ人間に関わり,癒し,世話,援助,教育をする役割を担っている人たちを対象として『生涯人間発達論―人間への深い理解と愛情を育むために』を上梓した。本書でE. H. エリクソンの学説を源流とする,精神社会的な発達論を展開したのだが,それだけに私は社会の変化に無関心ではおられない。10年が過ぎたからといって学説の骨格そのものはゆらぎない。しかし,各発達段階に新しい課題が突出してきている現状を鑑みるとき,それを学問的に考察することはきわめて時宜に適っていると考えた。
そこで本稿では,21世紀初頭10年間の世界および日本の社会情勢が,いかに人間発達に影響を及ぼしているのかを総合的に論じ,その上で各発達段階における新しい課題のキーアイテムを提出したい。
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