現代のカルテ
アジアの平和は?
野口 肇
pp.48
発行日 1966年12月1日
Published Date 1966/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203317
- 有料閲覧
- 文献概要
さる10月24〜25日の2日間,フィリピンの首都マニラで,アメリカほか目下ベトナム侵略戦に派兵している7カ国の首脳が勢ぞろいし,「マニラ会議」というのをひらいた.参加者はアメリカがジョンソン大統領,南ベトナムがグエン・カオ・キ首相,オーストラリアのホルト首相,ニュージーランドのホリオーク首相,南朝鮮の朴正煕大統領,タイのタノム首相,それにフィリピンのマルコス大統領です.ごらんのように,いってみれば,それぞれ度合いには差があるがアジアでアメリカと軍事同盟をむすんでいるその忠実な子分どもが親分のジョンソン大統領をむかえてベトナム侵略戦争の展望を話しあう,いわば内輪のあつまりです.
その点,日本の新聞は,佐藤栄作首相がこれに出席しなかったことを慎重で賢明な行動とほめていますが,これは事実上参加したものと理解すべきです.げんに直前,日本政府は一定数の自衛隊幹部群を南ベトナム戦場に「視察団」と称して送り,また会議のはじまる前日までマルコス大統領が日本を訪れて佐藤首相以下の関係者とヒミツな打合せをしていました.おりから日本国内では上林山防衛庁長官はじめ各閣僚が軒なみスキャンダルをバクロされ,もし首相が海外にでればそのスキに政府そのものが空中分解をするのは必至の時期でした.つまり実質的にはいちばん有力な参加国だったのです.
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.