扉
数えられない死—平和と人権
若井 晋
1
1東京大学国際地域保健学
pp.847-848
発行日 2003年8月10日
Published Date 2003/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436902424
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敗戦後まもなく安部能成は雑誌世界に寄稿した一文に寄せて新生日本を論じて曰く,「武力を有するものは武を涜し,力を有する者は力に溺るるを免れない,武力なく権力乏しきものにも,文化を培い道義に起つことは許される.この道以外に日本の生きるべき道はない.而もこの道こそ,本当は国家の生き行く栄光の道ではないか.真実を認識し,真実に堪え,知慧の光に導かれ,強く正しく,じっくりと歩みゆく日本の前途に光明あれ」と訴えた(『世界』1946年1月号).
新憲法が公布されたのはその後まもなくのことであった.軍国主義日本が滅び,戦争に反対し弾圧されていた多くの知識人,活動家,宗教者(キリスト者,仏教徒など)が解放され一斉に発言を開始した.それから五十有余年が経過し,第九条はなし崩し的空洞化により自衛隊(日本軍)の海外派兵は日常化してしまった.日米軍事同盟によって,日本は米国の腰巾着となっている.
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