世界の波
平和とりきめ/火事
末松 満
pp.30-32
発行日 1952年7月10日
Published Date 1952/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200317
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日本に引きつづいて,こんどはドイツが講和の番である。日本の講和にはソ連や中国が加つていないので,不具の講和といわれているが,ドイツの場合は,ドイツ自身が全部でなく,西の半分だけだから,日本以上にみじめなものだ。さすがに「講和条約」とは言えず「平和とりきめ」と名づけ,西ドイツ首相アデナウアー博士と米英仏3国との間で話がまとまつた。
一方「平和とりきめ」とは別に,「欧洲軍」を作る条約が5月9日,西ドイツを含めてフランス,イタリア,ベルギー,オランダ,ルクセンブルグの6国間で調印された。欧洲の安全を守るためには,アメリカを主將とする北大西洋条約の軍隊があり,日本におなじみ深いリツジウエー大將の下に14国が勢揃いしているから,屋上に屋を架すような「欧洲軍」は無用と思われる。しかし,フランスなどの考えによると,西ドイツを西大西洋条約に入れて対等に交際するのは御免だが,西ドイツの兵隊の力だけは利用したい。そこで「欧洲軍」という雇兵の集団を作つて,ことには西ドイツを入れた,というわけである。
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