特集 命を伝える
母の介護を通して感じること
小瀬 晢子
pp.382-384
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101323
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認知症の疑い
「せっちゃん歯医者に行ってくるね」と,階下から母の声。夜の7時を少し過ぎています。「えっ? もう夜になるのよ」と答えて,一呼吸。やはり母は認知症なのか。3年前のことです。
大正10年3月生まれの母は現在88歳。東京生まれのチャキチャキの江戸っ子。クルクルとよく働き,4人の子どもを育て,職業軍人だった父と戦後の労苦をも頑張りぬいてきた人でした。父の退職後は埼玉県飯能市の実家に夫婦二人で暮らし,父が他界した後の6年間は一人暮らしをしていました。「ボケないように」と書道を習い,大正琴を楽しみ,社交的で年齢よりもずっと若々しく生活していました。その頃,二女の私は,母の家から車で1時間ほどの所沢市に住み,自然が大好きな夫とたびたび母の所で過ごしていました。
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