映画の時間
—今,母と向き合う愛おしい時間—母よ、
桜山 豊夫
pp.309
発行日 2016年4月15日
Published Date 2016/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208415
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労働争議でしょうか,組合側が経営トップに交渉を迫るような場面から映画ははじまります.『母よ、』という題名とは違和感のあるシーンだと思っていると,カットの声がかかって,監督が飛び出てきます.そう,冒頭の場面は映画の撮影だったのです.フランソワ・トリュフォー監督の『アメリカの夜』(1973,フランス)を思わせるような,洒落た出だしです.映画の撮影風景を映画にした映画は,わが国でも『キネマの天地』(1986,山田洋次監督作品)などがあり,映画製作の舞台裏が垣間見れて,映画ファンにはたまりませんが,『母よ、』で描かれるイタリアの映画製作の様子も興味深いものです.
主人公のマルゲリータは女性監督で,アメリカから大物(と本人が思っているだけ?の)俳優バリーを招いて,社会派映画を撮影中です.バリーの到着が遅れるなど,アクシデントが相次ぎ,思うように製作が進みません.仕事のだけでなく,プライベートでも,母親が入院中で,肺炎を起こしたりして,気分は落ち込み思考は混乱しがちです.
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