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2022年4月に九州大学皮膚科の教授に就任して2年が経ちました.就任して思ったことは,これで自分のことは考えなくていい,すべてを教室と教室員のことを最優先に考えればいい,ということでした.2008年に海外留学から帰国後ずっと大学勤務であり,前任の古江増隆先生が退任後1年間教授は不在でしたので,長く教室運営には関わっていました.その中で,できるだけ皆に公平に,迷ったときには教室にとって何が一番いいか,と考えてさまざまな決定を下してきましたが,それがなかなか難しい.多くの教室員がいる中で,みなそれぞれの人生,キャリアのプランがあります.その考え方や価値観は本当に多様で,十分考えたつもりで人事やさまざまなことを決定しても,後から聞くと,とても不本意だった,ということがよくあり,何がいけなかったのかを考えることも多いです.
働き方改革や〇〇ハラスメントなどがあふれかえる中で,どのように限られた人的資源を活用して,教室の診療・研究・教育を発展させていくのか,なかなか難しい時代です.今まで,この教室はいい仕事をしているな,と思ったところは,多かれ少なかれ今でいうところのブラックな部分があったと思います.しかし,ハラスメントにおいては,本人がどう感じるかが非常に重要な要素です.ハラスメントの定義には,客観的な行為や言動だけでなく,それを受けた側がどう感じたか,つまり主観的な感情や反応が含まれます.少ない勉強量や仕事量で突然診療の能力が向上し,研究の成果が出ることはもちろんありえないので,教室員が自主的にやりがいをもって,それぞれが思う存分働くことができるような環境づくりが大事であり,そのためには自分自身も仕事にポジティブな気持ちで取り組み,皮膚科診療・研究の楽しさをしっかり伝えなければいけないと思っています.同時に,マイペースで働くことも否定することなく,大いに受け入れたいと思っています.
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