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事故要因の分析について
介護保険の施行前後から,急性期段階の医療事故だけでなく,長期ケア段階で利用者に生ずる事故(いわば長期ケア事故)についての関心も急速に高まってきた。現在では,訪問看護事業所のほとんどが,事故報告書やヒヤリ・ハット報告書を作成するようになっている。しかし,報告書を作成するだけでは意味はなく,その分析が必要である。ところが,事故要因の分析の手法については,いまだ十分に検討されていないように見受けられる。実際,報告書は集めたものの,どのように分析したらよいか分からないため,結局は,報告書に作成者の反省を付記する程度で検討を終えてしまっているところもある。
分析手法についても注意を払っている事業所のなかには,いわゆる4M法やSHELモデルなどを用いて事故要因を分析しているところもある。4M法とは,ミスを起こした職員の個人的,生理心理的条件と直接行動要因のほか,その職員を取り巻く背後環境のなかにも重要な事故要因が存在するとの考え方に立って,職場でのタテ,ヨコの人間関係等(Man)や,装置や機器などの物的要因(Machine),作業情報,作業方法と環境(Media),安全法規による取り締りや規制,点検管理のほか,指揮監督や指示の方法,そのフィードバック,教育訓練の問題(Management)と事故との関連性を分析する手法である1)。また,SHELモデルとは,Liveware(システムの使用者としての人間)を中心にしながら,人間と機械・装置(Hardware)との整合性(L-H)や,人間と手順・マニュアルなどのシステムの非物理的側面(Software)との適合性(L-S),人間と環境(Environment)との適応性(L-H),人間同士の関係(L-L)のうちに誤りの原因を見いだそうとする分析方法である2)。
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