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はじめに
地域における精神保健福祉業務は,家庭訪問等による生活支援,相談事業などを含め,昭和40年代から保健所保健師が中心となり活動を展開してきました。当時は,一部の熱心な精神病院により訪問看護や往診活動が細々と行なわれている他には,ほとんど社会資源といったものはありませんでした。保健所保健師の行なう訪問指導も,統合失調症の方を中心に,「受診・入院に関する問題」をもつ緊急性の高いケースを医療ルートにつなぐための援助が多かったようです。
しかし,昭和50年代後半には保健所デイケアも活発化し,昭和60年代に入ってからは,デイケア終了者の次の社会復帰へのステップづくりとして,共同作業所づくりへの援助活動が活発になっていきました。これに伴い,保健師の活動方法も多様化し,個別ケースへの援助も長期にわたるものが増え,医療・福祉機関等との連携による援助も増加していきました。
平成11年の法改正では「精神障害者地域生活支援センター」や居宅生活支援事業等が明確に位置づけられ,精神保健福祉業務が従来の保健所から市区町村を中心に行なわれることとなり,地域において精神障害者を支援する機関や職種は保健所保健師だけではなく,さまざまに広がってきた経緯があります。
一方,医療面からの精神障害者への訪問看護は,精神科医療機関の専門看護スタッフにより行なわれてきた歴史がありましたが,平成6年の健康保険法等の改正により,精神障害者に対する訪問看護を行なう一般の訪問看護ステーションも増えてきています。
長期にわたる地域生活支援は,単独で行なえるものではなく,保健師もさまざまな関係機関と連携し,時には必要な社会資源を作り上げるという作業を行ないながら,よりよい支援を模索してきました。今後,訪問看護や介護の分野での精神障害者に対する地域支援が一般化していく中でも,関係機関(社会資源)との連携なしにはより良い支援をしていくことはできないので,まずはその理解からすすめたいと思います。
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