特集 精神訪問看護のコツを学ぶ
不安・抑うつを見逃さないために―プライマリケアの現場でできること
小笠原 望
1
,
佐野 良仁
1
1大野内科
pp.746-752
発行日 2004年10月1日
Published Date 2004/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100556
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はじめに
「不安・抑うつ」は,今や一般的な言葉となった。とくに,抑うつは平均寿命にも影響を及ぼす自殺の増加との関係も指摘されている。自殺による死亡者数は年間3万人を超えており,厚生労働省はもちろんのこと,日本医師会でも自殺予防マニュアル1)を作成し,自殺予防の啓発に乗り出している。
「不安」と「抑うつ」は違う概念であり,精神科医からは「不安・抑うつ」と一括して論じるのをおかしいと指摘されることが多かった。しかし,かかりつけ医として患者さんの心に接していると,「不安・抑うつ」をひっくるめて考えるほうが実際的であると感じることが多く,ここでは2つをわけずに話をすすめる。不安としての訴えと共存,あるいはその訴えの背後に抑うつがあることが特に高齢者では多いのである。
筆者らは,日本最後の清流,四万十川のほとりの無床診療所でかかりつけ医としての診療をしている。もちろんなんでも診るプライマリケア医なのだが,とくに心への対応を大事にしている(診療科目としては一般内科,神経内科,心療内科)。また,訪問診療も行なっており,過去5年間で40人以上を在宅で看取ってきた。その現場でも,抑うつの気分に出会うことがしばしばである。元気そうに見せるお年寄りが,診察室の中で涙を見せたり,不安を口にする場面によく出会う。「不安・抑うつ」は誰にでもおこり,どこにでもあるありふれた症状として,日々の診療では感じている。
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