特集 介護保険の苦情相談―どんな苦情があり,どのように対応しているのか
市民オンブズマン活動から見た苦情相談
岡本 祐三
1,2
1NPO「介護保険市民オンブズマン機構大阪」
2岡本クリニック
pp.345-357
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100507
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【第1部】市民オンブズマン活動と「苦情」解決の意義
「介護保険市民オンブズマン機構大阪」とは
私たちは,介護保険を真に利用者本位の制度としていくため,2000年にNPO(非営利組織)「介護保険市民オンブズマン機構大阪」(「O-ネット」)を設立し,市民自らが活動し,介護の質の向上に取り組もうという新しい形の市民活動を開始した。これは,専門的な研修を受けたボランティアの市民を「オンブズマン」として養成し,介護の現場(主に施設)に派遣し,利用者の立場に立ってさまざまな要望や苦情に耳を傾け,介護事業者に利用者の意向を伝えたり,改善策を提案したりする中で,利用者の満足と介護サービスの質の向上を図ろうとするものである。
活動に際してねらいとするのは,あくまでも利用者の“エンパワーメント”(自分の持っている力を発揮すること)であり,「市民オンブズマン」が介護の現場に入ることによって,利用者と事業者の間のコミュニケーションを促し,“気づき”のシステムを創出し,両者の円滑・良好な関係を実現させていくことである。そのため従来の「行政オンブズマン」に見られるような「告発型」ではなく,利用者と事業者の円滑な関係をコーディネートしていく「橋渡し役」を担おうとするものである。介護保険の主体である市町村の行政機関や事業者団体から独立した「第三者機関」として,市民自らが運営に携わり,苦情解決のための活動に当たることによって,介護サービスの質の向上につなげていていく―。介護保険がめざす「対等な契約」と「市民参加」のコンセプトを,この市民運動を通して社会に根づかせていきたいと考えている。
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