レポート
介護保険と市民オンブズマンがひらく新しい時代
岡本 祐三
1,2
1神戸市看護大学
2介護保険市民オンブズマン機構・大阪
pp.268-274
発行日 2000年4月15日
Published Date 2000/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902143
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高齢者介護の質と人権問題
我が国にとって1990年代は,「寝たきり」とは「寝かせきり」のことであり介護の本質は「お世話」ではなく「自立支援」であるべきだということ,つまり高齢者介護の「質」が実は高齢者の人権にかかわる重大な問題であることが広く社会に普及した,エポックメーキングな時代として,歴史に残る10年間となるだろう.また,「寝たきり老人大国ニッポン」「介護地獄大国」の汚名返上のためにも,そうならなければならない.
それまでは高福祉諸国として少数の福祉研究者などからの噂話のレベルでしか知らなかった北欧に,1980年代後半から,豊かになった日本の市民が自ら出かけることができるようになった.そして,デンマークやスウェーデンには日本でみられるような悲惨な「寝たきり老人」がいないという驚くべき現実を知るにおよんだ.「寝たきりゼロ」社会実現のためのノウハウ,すなわち単なるお世話ではなく,医療と福祉サービスの自立支援という共通の価値観のもとに総合的に提供する社会的な介護システムを整備することが問題解決のポイントであるという教訓がよく知られるようになり,ついには介護保険制度の実現へと進んだ.さらに介護保険制度をめぐる論議の高まりのなかで,サービスの量的整備だけでなく,その質についても急速に関心が深まりつつあることも,介護保険がもたらした大きな成果と言えよう.
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