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はじめに
■家族介護者の介護負担をいかに軽減するか
愛媛県松山市にある東松山訪問看護ステーションでは,平成14年10月から新しい独自の試みとして,「通所看護」事業を行なっている。この取り組みは,重度の脳血管障害後遺症や脳挫傷,大脳変性症等による四肢麻痺,意識障害,失語,嚥下障害等の症状を抱えて生活している利用者と介護者に対して,介護負担を軽減するための効果的援助方法を模索する訪問看護活動の積み重ねのなかで始まった。
まず,訪問看護ステーションの職員,母体病院の事務担当者,行政関係者,介護者に加えて大学の看護学部の教員で検討チームを構成し,訪問看護師の「介護負担を軽減したい」という切実な想いに添って,具体的かつ多面的に検討し,必要性と可能性を吟味した。介護負担軽減のケアが必要なケースを対象に,訪問看護ステーションに利用者を通所させ,日中のケアを提供するための具体的な方法を話し合った。
こうした経過のなかで,平成14年度の訪問看護振興財団のモデル事業の助成金が得られ,この「通所看護」の試みはモデル事業としてスタートした。モデル事業は東松山訪問看護ステーションの利用者を対象として,平成14年10月から12月まで,9名の利用者に対して延べ62回の「通所看護」を行なった。平成15年度からは東松山訪問看護ステーションの独自の事業として継続し,2名の利用者に対して週2回の「通所看護」を行なっている。平成15年11月からは日本訪問看護振興財団と協働した未来志向プロジェクトの一貫として,対象者と地域連携システムを拡大する方向で準備している。
モデル事業期間中の成果と課題は,『平成14年度訪問看護ステーションにおける多機能設置モデル事業報告書』等で述べ,また日本老年看護学会第8回学術集会でも発表している。本稿では,訪問看護師の想いから出発した「通所看護」の実施に,ともに取り組んだ経過を通して,訪問看護の実践者ではない立場から,一緒に学び考えたことを述べる。
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