連載 ほんとの出会い・10
柚子は百年,村は千年
岡田 真紀
pp.69
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100380
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国産の穀物で育てた鶏の卵や有機野菜などを届けてくれる「大地の会」に入って,かれこれ18年になる。料理は得意ではないけれど,「素材はいいからね」というのが我が家の自慢。生産者と消費者が顔の見える関係を,という趣旨のツアーに参加すると,無農薬野菜のかげにはどれほどの苦労があるのかがよく分かる。野菜につく虫を毎朝毎朝取り除く手間に加えて,近所の農家からは「お宅のせいでうちの畑にも虫が来る」と苦情を言われ,まさに村八分になることもある。
北海道の農場で食べたじゃがいもは,ただバターをまぶしただけなのに力強く深い味わいがあった。一切化学肥料を与えないために,農家の方は石狩川の流域に生える草を刈りとって積み重ね山となし,それを3年間寝かせて堆肥を作っておられる。安全なじゃがいものためには健康な堆肥,健康な堆肥のためには汚れていない川が必要,という言葉に,大いなる自然のなかでこそ生かされる私たちの命であることを実感した。
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