連載 待合室で僕は・6
一日(いちじつ)にして六千万年を失する
大西 赤人
,
大浦 信行
pp.408-409
発行日 1997年6月25日
Published Date 1997/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901624
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もともと僕は,こと自分自身に関しては極めて楽観的に考えるので,たとえば将来について思い悩んだというような経験はほとんどない.何かしらの困難にぶつかった時にも,「まあ,どうにかなるだろう」と割り切ってしまう.ところが,それとは対照的に,話が人間(人類)全体の運命となると,非常に悲観的なのだ.人間性というもの―人間性の“善”の面―にあまり信用を置いていないので,おおよそ,人類は着々と破滅に向かって進んでいると思っている.もし,宇宙の遥か彼方から巨視的に地球を観察することが出来たならば,多分,この星を覆う人間たちの姿は,さしずめ湿った床下にはびこるカビのように見えるのではないか?もっとも,そんな僕の想いは,総てを諦めてバンザイするという意味ではなく,人類の悲観的な未来を少しでも明るい方向へ転換すべく努めたいという意志をも含んではいるのだけれども…….
とりわけ,最近の日本の状況については,大小遠近とりどり,悲観的を通り越して絶望的と呼ぶほうがふさわしい気になる.沖縄特別措置法の成り行きも,動燃のデタラメさも呆れるばかり.「日本は安全な国」という定評が空疎に響く,「通り魔」的殺人事件の多発.そして,街中のあちこちで携帯電話に向かってしゃべっている人々の不気味さ,「たまごっち」が数万円で取り引きされる異様さ.
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