コンタクトレンズ(12)
千円以下は本でない
長谷川 泉
pp.60
発行日 1960年4月10日
Published Date 1960/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202075
- 有料閲覧
- 文献概要
洋書では1頁100円ぐらいの値段の医書がある.洋書でなくても,医学書では1,000円以下は本でないと言われている.その点一般書とは,まつたくけたがちがうのである.そして,そのことは,本を作る出版社の問題だけではなく,本を買う立場から言つてもそうである.あるテーマについて書かれている本で,1,000円以下といつたようなものでは,どうせ最初から,ろくなものではないだろうということになるからである.人命を扱う医学,そして学問の世界では,安かろう悪かろうは通用しない.値段の問題は2の次であつて,内容がすべてを律するからである.
医学書院から最近「脳腫瘍」という本が出た.東大病理の所安夫博士の著である.この本は著者の半生の研究の成果がまとめられたもので,A4版で1千頁になんなんとする大冊である,進行の過程においても,"枕になるような本"ということが言われていたものである.しかも本書にはミクロ,マクロ併せて鮮明な写真717,図版157が収められており,写真は断ち落しに入れられているから,あたかも美術書でも見るような豪華本となつている.そのかわり定価も1冊1万8千円という高値なものである。1冊本の医書としては本邦では最高のものである.
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.