研究報告
日常生活に活用できる呼吸援助―シルベスター法の効果
葉山 有香
1
,
井上 智子
2
,
坂本 雅代
2
,
高辻 功一
2
1大阪府立大学看護学部人・環境支援看護学領域
2大阪府立大学看護学部
pp.768-773
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100324
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はじめに
呼吸をすることは人間の基本的な欲求であり,息苦しさを感じることや,呼吸が安定して行なえないことは,身体的にも精神的にも苦痛が大きく,Quality of life(QOL)を著しく低下させる。今日,高齢者の日常生活に歩行運動などのリハビリテーションを取り入れることにより,高齢者のQOL向上,健康増進が行なわれている。人の肺機能は,加齢に伴い低下することが報告されている1,2)ので,日常生活の中で呼吸に関与する筋肉の運動を行ない,肺機能を高める訓練を取り入れることは,高齢者の健康増進だけでなく,QOLの向上にもつながると考えられる。
シルベスター法は,英国の医師Henry Robert Silvesterによって提唱された人工呼吸の方法で,新生児仮死に対する人工蘇生術の1つとして行なわれてきた。今日では,胸郭可動域訓練の一手法として,主に開胸・開腹術後患者に対して肺合併症の予防や早期離床を目的に実施されている3)。
シルベスター法は,ベッド上で簡易に行なえる肩関節運動で,上肢の運動を行なうことにより換気量の増加が得られるので,高齢者の肺機能を高める運動として優れていると考えられる。しかし,シルベスター法が肺機能と循環機能にどのような影響を及ぼすかについての報告はなく,シルベスター法を受ける対象者の主観的評価も報告されていない。そこで,本研究はシルベスター法による生理的変化を測定し,主観的評価との関係性を検討した。
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